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「戦争法」の廃止と立憲主義の原則を守ることを求めるアピール

 昨年9月に成立した「安全保障関連法(「安保法」)」は、本年3月末に施行されようとしています。私たちは、この法律の制定手続が立憲主義に反するだけでなく、内容が憲法違反であり、また専守防衛の原則を捨て去りかえって日本の安全を脅かす「戦争法」であると考えています。そこで、立憲主義の回復と同法の廃止を進めるため、来る参議院選挙など国政選挙の場で厳しい審判を下すことを、県民の皆様に訴えます。

 「安保法」の制定のために政府は、一昨年7月に集団的自衛権を容認するとの閣議決定を行いました。これまで、憲法上、「集団的自衛権」とは「他国防衛を本質とする」のでその行使はできない、との解釈が歴代政府の国会答弁などにおいて定着していたものを変更したのです。長年にわたり定着した憲法解釈を政府の都合で変更することに対して、元最高裁長官、歴代の法制局長官、全国の弁護士会、殆どの憲法学者、そして多くの市民が立憲主義に反するとして厳しく批判しました。

 「安保法」によって、憲法が禁止している国際紛争解決のための武力行使が可能となり、自衛隊は、地球上あらゆるところで武力行使ができるようになります。自衛隊は、戦闘現場以外なら、他国軍に武器・弾薬を提供できるようになり、米艦防護中の場合は現場指揮官の判断だけで武力行使が可能になるというように、「安保法」は戦争への危険を増大するまさに「戦争法」なのです。

 すでに、昨年11月から「戦争法」を先取りして、日米間で「同盟調整メカニズム」が設置され、平時から有事に至るまで全ての事態に自衛隊と米軍が共同で対処できる計画作りが始まっています。

 このように、安倍政権が正当な手続を無視して憲法解釈を変更し、強引に「戦争法」を成立させたことは、「権力者にそのルールに従って国を治めさせる」という立憲主義の原則から逸脱するものです。また、憲法違反の「戦争法」によって、70年にわたって平和主義により築き上げてきた国際的信頼も瓦解させてしまうことになり、戦後のわが国の歩みを無にする暴挙です。

 安倍首相は次の参議院選挙で憲法改正を争点にすると明言していますが、憲法違反の法律を先に作り、その法律とつじつまを合わせるために憲法を改正するというのは、全くの本末転倒であって、断じて許すわけにはいきません。

 私たちは、かつて日本が行った侵略戦争に大学が協力して多くの学徒を戦地に送った痛恨の歴史を経験しています。その歴史への深い反省から、再び若者を戦地に送り出すことのないよう、憲法9条を礎とした教育研究に携わってきました。私たちは、学問と良識の名において、民主主義・平和主義を守るために、日本を「戦争をする国」に変える「戦争法」を速やかに廃止することを求めます。また、このような権力の暴走を食い止め、立憲主義の原則に基づく政治を回復するために、反憲法主義・軍事中心の「積極的平和主義」の安倍政治に対し、来るべき国政選挙において厳しい審判を下すよう県民の皆様に強く訴えます。

                   2016年1月16日

 

       戦争法の廃止を求める学者の会・大分 (代表 神戸輝夫)

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